
五月晴れの休日で非常に多くの人が初夏の空気に誘われ
外へ繰り出していて、土産物屋さんが並ぶ通りは、人混みで
通り抜けるのも一苦労です。
人の多い通りを避けて横道に入ったときに、一人の女性が
立ち止まって、手をかざして上を見上げていました。
道を覆うようにセンダンの木が張り出していて、上には
薄紫の雲を引いたように花が咲いています。
万葉集では楝(あふち)と呼ばれて詠まれているセンダンの
木の花です。
女性の手には小さなスケッチブックがあり、花を描いて
いるようでした。
陽射しがある上に青空のために、上の方で咲いている
花はとても細部までは確認できません。
木の上に薄紫色の絹のスカーフを被せた様に空に溶け
込んでしまっています。
強い陽射しを避ける備えは小さな帽子だけで、スケッチを
するのも日焼けと、首の疲れて大変です。
「あふち」の名前は、花の色が薄い藤色であることから
淡藤(あわふじ)と呼ばれたところから来ているとか。
ビーズのような多くの玉房状に実を付けるところから
「千玉」や「千団子」と呼ばれ、センダンとなったのが
平安時代だと書かれていました。
万葉集に詠われている歌の一つに、
玉に貫(ぬ)く 楝(あふち)を家に 植えたらば
山霍公鳥(やまほととぎす) 離れず来むかも
大伴書持 17-3910
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